60歳

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「人生100年時代」という言葉が定着しました。60歳の還暦にもなると「残り40年もある」と楽観的にも、悲観的にも捉えられる現代のキーワードの一つでしょう。ただし、実際には人生100年時代はまだまだ先で、もう少し短いスパンで老後を見据えるのが現実的だと思います。
そう考えると、50代までの現役期と、70代からの高齢期をつなぐ60代の過ごし方は、長寿社会に生きる私たちの一生において、これまでに増してその重要性を見つめ直すべきではないでしょうか。定年を迎え、第一歩を踏み出す60歳は大きなターニングポイントになるかもしれません。これまでの歩みを振り返り、これからの歩みを見据える時かと…

▼「LIFE SHIFT」

「人生100年時代」が唱えられるようになったのは、2016年に発行された英国のリンダ・グラットン教授の著書「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」がきっかけだったと思います。「学ぶ」「働く」「引退」という従来の3段階のライフステージに合わせた生き方では、長寿化にマッチせず、もっと柔軟な生き方を模索する必要があると指摘しました。この文脈においても60歳は一つのきっかけになります。
ですが、同書の前向きな趣旨は理解しながらも、人生100年と言われ、多くの人が老後の生活費や医療・介護などの問題に少なからず不安を覚えています。先行き不安は20代、30代も例外ではありません。
2019年には「老後資金2000万円(不足)問題」が取り沙汰され、物議を醸しました。この問題は、老後不安を語る際の常とう句になっています。

▼人生100年時代は現実か

日本人の平均寿命は2020年、男性81・64歳、女性87・74歳になりました。男女とも過去最高を更新し、女性は世界1位、男性は2位です。
医療技術の進歩や健康意識の向上により、長寿化は確かに進んでおり、「人生100年時代」という言葉はあまり抵抗なく受け入れられた感があります。

平均寿命の推移をみてみました。2010年、男性は79・64歳、女性は86・39歳でした。2020年までの10年間でどれぐらい伸びたのかというと、

男性:81・64歳-79・64歳=2・0歳/10年 → 年0・2歳(2・4カ月)
女性:87・74歳-86・39歳=1・35歳/10年 → 年0・135歳(1・62カ月)

このペースだと、平均寿命が100歳に達するまでにどれぐらいかかるのでしょうか。

男性:(100歳-81・64歳)÷0・2歳=91・8年
女性:(100歳-87・74歳)÷0・135歳=90・8年

あくまで単純計算ですが、90年もかかる勘定になります。
半世紀前の1970年にさかのぼると、平均寿命は男性69・31歳、女性74・66歳でした。この間の伸びは、

男性:81・64歳-69・31歳=12・33歳/50年 → 年0・2466歳
女性:87・74歳-74・66歳=13・08歳/50年 → 年0・2616歳

男女とも伸び幅が小さくなっていることが分かります。
こうしてみると、「人生100年時代」はまだまだ先のようです。長寿化の象徴として、100歳の大台を見通しているのでしょうが、耳障りのいい(?)言葉が先行し、ある意味、不安をあおっていることはないでしょうか。
もちろん、100歳以上の人は増えています。2021年9月時点で8万6510人でした。前年より6060人増えたそうですが、100歳まで生きる人は稀です。

▼男性「人生80年後半時代」、女性「人生90年前半時代」

では、90歳に達するのはいつでしょうか。

男性:(90歳-81・64歳)÷0・2歳=41・8年
女性:(90歳-87・74歳)÷0・135歳=16・7年

国立社会保障・人口問題研究所は、2050年には女性の平均寿命が90歳を超えると推計しています。伸びは鈍化しているので、到達年は単純計算より遅れる見通しです。
いずれにしても、男性は「人生80年後半時代」、女性は「人生90年前半時代」と呼んだほうが適当ではないでしょうか。言葉の切れはよくありませんが…

自分の寿命は誰にも分かりません。あくまでも数字上の単純計算であり、寿命は人それぞれ。平均寿命より長く生きる人もいれば、それより短い人もいます。
ただ、60歳の人が「あと40年もある」と楽観視したり、悲観視したりするより、残りの人生として、男性なら25年、女性なら30年をまず見据えるのが現実的だと思います。
例えば、65歳で現役を引退し、公的年金を受給する男性であれば、85歳まで20年。この時間は長いでしょうか、短いでしょうか。

▼健康寿命との差

気がかりなのは、健康寿命とのギャップです。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。2019年、男性の健康寿命は72・68歳、女性は75・38歳でした。65歳の男性なら10年足らず。決して長くないと思いませんか。同年の平均寿命は、男性81・41歳、女性87・45歳でしたので、健康寿命との差は、男性8・7年、女性12・07年になります。この差は縮小傾向が続いているようですが、できるだけ縮めるため、健康寿命の延伸が国家的な課題になっています。
老後資金2000万円問題に立ち返ると、できるだけ長く健康であれば、自身の医療費や介護費を節約できると考えることもできます。そう意識して日常の食事や運動に気を使いたいものです。

▼60代をどう生きるか

先の「LIFE SHIFT」は、老後は人生のおまけという考え方は捨てよう、レクリエーション(余暇)ではなくリ・クリエーション(自己の再創造)に時間を使おう、と論じます。
60歳になった時、老後資金を確保し健康を維持するため、働き続けるのも選択肢でしょう。あるいは、ゆとりある生活は無理だけれど何とか暮らしていけそうだから、完全引退して旅行や趣味を楽しみたいという人もいるでしょう。
60歳でどう方向を定め、年金を受給するまでの5年間、あるいは60代の10年間をいかに充実させるか。「人生100年時代」に浮足立つより、現実的なテーマであり、大きな意味を持っていると思います。

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