スーパーのレジで、財布から1円玉を19枚取り出すお年寄りがいました。レジのパンチャーさんとの会話から聞こえてきたのは、こんな嘆き節です。「近所の郵便局のATMで硬貨の預け入れに手数料がかかるようになった。銀行のATMも自分のお金を引き出すときに手数料がかかったりする。お客さんからお金を預けてもらって、そのお金で商売しているのに…」。憤慨が伝わってきました。同感です。
▼硬貨は1種類20枚まで
レジ前に「硬貨は1種類につき20枚までご利用いただけます。21枚以上はご利用をお断りしております」というステッカーを見かけたことがあります。店側にとっては手間がかかって迷惑なのでしょう。後ろに並んでいるお客さんもイライラすることがあるかもしれませんね。
この張り紙にはいちおう根拠があるようです。「貨幣は、額面価格の20枚までを限り、法貨として通用する」。硬貨で支払うときは1種類につき20枚までと、「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に定められているとか。例えば、300円の商品を10円玉30枚で支払おうとするお客さんがいれば、受け取りを拒否できることになります。もちろん、大切なお客さんに対し、しゃくし定規にはいかないでしょうけれど。
先のお年寄りは、このことを知っていたのか、たまたま19枚だったのかは分かりません。それにしても、貯まった釣り銭を活用することに困るようになるとは。1円玉貯金なんて、もう子どもたちに勧められないのでしょうか。
▼がめつくない?
郵便局のATMで硬貨を預け入れる場合、25枚までは110円、50枚までは220円、100枚までは330円の手数料がかかるようになりました。昨年までは無料でした。
大手銀行や地方銀行の窓口でも、一定の枚数を超えると手数料がかかるようになりました。釣り銭を根気に貯めても、預けるときに無駄に減ってしまっては、やはり「預けてもらったお金で商売をしているのに…」とお客目線で言いたくもなるわけです。
ATMの管理にかなりの経費がかかっていたり、たくさんの硬貨が業務の手間を増したりするのは何となく分かりますが、そこまでがめつい商売ってどうなのか? サービス精神はどこへ?
これでは低金利の逆風の中、お客さんはますます遠のいていくと思います。
▼敬遠される硬貨
財務省の2022年度の貨幣製造計画によると、10円玉は前年度実績より約3割少ない1億2000万枚の見込みで、20年前の2割程度の水準になる見通しだそうです。1円玉や5円玉、50円玉は2021年度以降、収集家向けの貨幣セットを除いて製造されていないとか。
硬貨が敬遠される時代ですが、レジ前で「硬貨は1種類につき20枚までご利用いただけます」のステッカーがある一方、「おつり銭が不足しています。ご協力お願いします」といった張り紙を見かけたことはありませんか。硬貨は今、一体どのように流通しているのか、あるいはどこかで滞留してしまっているのか、興味がわきます。
▼キャッシュレス時代
財布を持たなくても用が済むキャッシュレス化が急速に拡大しています。スマホ1台持っていれば、○○ペイで即座に支払い完了。本当に便利だけれど、預貯金口座からわずか数秒でチャージすることにだんだん抵抗感が薄れていくような気がしています。
子どもの頃、親から「1円を笑う者は1円に泣く」と注意されたことを覚えています。そんな世代としては、ジャラジャラとかさばる1円玉や5円玉であっても、ないがしろにしたくありません。
▼新1万円札の顔

1000円札、5000円札、1万円札の3種類は、2024年度の上半期をめどに新紙幣が発行される予定です。1万円札の顔になるのは、近代日本資本主義の父といわれる実業家渋沢栄一。日本初の銀行である第一国立銀行(後の第一勧業銀行)を設立し、初代頭取を務めました。
渋沢は現代の銀行経営をどう見つめているでしょうか。利益追求に偏重し、何か大切なものが軽視されていませんか。有名な「論語と算盤(そろばん)」に著された渋沢の教え、志は引き継がれているのでしょうか。はなはだ疑問です。
〈追記〉
▼5円玉レアメタルに⁉
ウクライナ危機と円安によって円建て銅価格の高騰に拍車がかかり、5円玉の原価が一時、額面の5円に迫ったという記事が5月22日付の日経新聞に載っていました。「50年後にはレアメタルになる」との専門家の見方も紹介。5円玉の時価が額面を超える可能性は消えていないとのことです。


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