明治神宮と大学同窓会

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78回目の「終戦の日」を迎えた今夏、上京した折に初めて明治神宮に参拝しました。強い日差しの下、汗をかいて長い参道を歩きました。戦時下、明治神宮外苑で行われた雨中の学徒出陣の映像を頭に浮かべつつ、戦陣に散った多くの学徒を思い、還暦を過ぎたわが人生において、平和と自由を享受してこられた幸せに感謝の念が募りました。

もとより、明治神宮は明治天皇と昭憲皇太后をまつる大社です。参拝したきっかけは、東京五輪のメイン会場となった新国立競技場を訪れたことでした。一般公開されている「空の杜(もり)」を一周し地上に下りたところ、競技場の千駄ヶ谷門近くに建つ「出陣学徒壮行の地」の碑が目に留まりました。

ここは、昭和18年10月21日、明治神宮外苑競技場だった当時、出陣学徒壮行会が挙行された場所でした。うっかり忘れていたことを思い出し、終戦記念日が過ぎたばかりのこの機会に明治神宮に参拝しようと、20分ほど歩いて向かったのです。

戦局が悪化する中、徴兵猶予が停止された大学生らは戦地に駆り出され、挙げ句の果て、国と家族を守るため、理不尽にも無謀な特攻作戦に命を捧げる若者もいました。

昭和30年代後半生まれの私たちは、親世代ほどではありませんが、今から振り返れば、戦後からさほど遠い世代でもなく、危うきを免れたと言えなくもない気がするのです。

明治神宮の本殿へと、いくつかの大鳥居をくぐって神域を進みながら考えました。戦後復興から高度経済成長を経て、安定の時代に学生時代を過ごし、その後も平和と自由が守られたこの国の環境に恵まれてきたことが、心底ありがたいという気持ちになります。ウクライナをはじめ、世界各地の現況を思えば尚更でした。

今回、上京した目的は大学の同窓生たちとの再会でした。10年近く会う機会がなかったので、本当に懐かしく、互いの近況報告に話が弾みました。卒業から40年近く。この間、大病を患って幸い回復したり、責任重大な要職に就いたりと、還暦を過ぎても健在な面々。旧交を温める時間はあっという間に過ぎましたが、話す中で大切な家族の幸せを願う気持ちがじんわりと伝わってきて、こうした親友を持てたことを、言葉には出しませんがうれしく思いました。

時代背景が違えば、出陣学徒たちにも全く別の学生生活があり、その後の長い人生、家族の営みがあったはずです。

新国立競技場と明治神宮を訪れたのは、同窓会翌日のことでした。大学卒業後、私たちはそれぞれ道のりは違えど、なんとか歩いてこられました。誰もが平坦ではなかったことでしょう。ただ、我々は先の大戦における多大な犠牲を前提に、時代の恩恵を受けてきたんだと確信します。参道を歩きながら、私たちの道のりの原点を再認識したのです。

私、定年退職した今が多少、気持ちにゆとりがあるからかもしれません。こんな暢気なことを言っていて、今後、いざ自身や家族が大変な困難に直面したとき乗り越えられるのか、自信も覚悟もありませんが、年月を経て、再び心の安穏を取り戻し、この原点に立ち返ることができればと願います。

参道の途中、明治天皇御製とともに、昭憲皇太后御歌が掲示してありました。
「人ごとの よきもあしきも こころして きけばわが身の ためとこそなれ」

歴史が示唆することにも耳を澄ませていきたいものです。

年齢のせいか、何事もすぐ忘れてしまう前に取り止めのないことをいったん書き留めました。この夏の異常な暑さの中、敗色の暗雲が立ち込めだした80年前に思いを巡らせる上京になりました。皆さんと共有できれば幸いです。

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