このところ「壁」の話題をしばしば見聞きするようになった。103万、106万、130万と、いろいろ出てくるからややこしい。
年収の壁のこと。最低賃金が上がっても、これらの壁を前に働き控えが増え、かえって人手不足を招くとの意見は以前からあったが、先の衆院選結果を受けて、一気に見直し議論が活発になったのは前進だ。年収の壁が、せっかくの最賃アップ効果の支障にならないよう、知恵を絞って仕組みをより良く、より分かりやすく改める好機だと思う。
今年の漢字候補の一つになりそうなくらい頻出する「壁」だが、この場で書きたいのは、ふと連想したまったく別の壁のこと。NHKが10月に放送した「映像の世紀バタフライエフェクト 壁 世界を分断するもの」が印象的だったからだ。
番組が列挙したのは、対立するインドとパキスタン国境の壁、東西冷戦を象徴するベルリンの壁、朝鮮半島の38度線、そして、トランプ氏が不法移民を防ぐため築いたアメリカとメキシコ国境の壁、今も停戦に応じないイスラエルがパレスチナを隔離してきた壁、ペルーの首都リマに建設された富裕層と貧困層の居住区を隔てる壁、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけにフィンランドが国境強化のため建設を始めた壁…
1961年、東西ベルリン境界線を警備中、東から西へと有刺鉄線を飛び越えて亡命したコンラート・シューマン(写真「自由への跳躍」で有名)の人生など、それぞれの壁をめぐる「絶望と希望の物語」に見入った。ナレーションは「人類の歴史は壁の歴史でもあった」と伝えた。1989年のベルリンの壁崩壊時16だった壁は78まで増え、その長さは地球1周分の4万キロに達するそうだ。
人々の前に立ちはだかり、家族さえも分ち、憎み合い、血を流し合う悲劇まで引き起こす壁とはいったい何なのか、人類はなぜいつまでたっても壁をつくらなければならないのか、世界はいつか壁を乗り越えられるだろうか。


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